★このお話は、くんぷうが想像するフィクションですよ
名古屋市内に住む加藤さん一家には二人の子供がいます。上のお姉ちゃんは小学校4年生。その弟のサトルくんは今年5才になりました。
今夜はめずらしく早く帰ってきたお父さんがサトルくんを寝かしつけることになりました。
「ねぇパパ。お話ししてよ」
サトルくんは、おふとんの中から一緒に横になっているお父さんにせがみます。
「ああ、いいぞ。どんな話がいい? うらしま太郎か? それとも桃太郎か?」
お父さんはトクイげに言いましたが、サトルくんは首をふりました。
どちらのお話もお母さんに毎日のように読んでもらってる定番の絵本なのです。サトルくんはお話の先を、もうすっかり覚えてしまっていました。
「ダメか? う〜ん、そうだなぁ…」
お父さんは、しかたなく何か話のネタはないかと考え込みました。
小さな息子に会社でのことを話してもわからないだろうし、かといってサトルが大好きなアニメや仮面ライダーの話はくわしく知らないしな。
そうだ、ぼくが子供の時の話なんてのはどうだろうな。
お父さんは思いつきました。お父さんがまだ小さかったときの頃、不思議な夢を見たことがあったんです。
「よし、サトル。おもしろい話をしてやるぞ。お父さんがサトルくらい小さかった頃の話だ」
「うんっ」
サトルはワクワクして、お父さんのお話しするのを待っています。
そして、お父さんのススムさんは、サトルくんにわかるようにゆっくりと話はじめました。自分が子供の頃に見た不思議な夢のことを、ゆっくりと思い出しながら…
そこは大きな森の中でした。
森の景色は、どんなに歩いても同じに見えました。
ススムの背よりずっとずっと大きな木がたくさん立っていて、ススムをかこんでいるのです。
「おとーさ〜ん!」
ススムはありったけの大きな声で何度も呼んでみましたが、森の木がざわざわと言う声しか聞こえません。
もうススムには、どうしたらいいのかわかりません。
わからなければ、泣きたくなるものです。
ススムは大きな木に寄りかかって、ヒザを抱えて泣きだしてしまいました。
ひとりでいるのは、とてもさびしくて、とても心細くて、とても悲しいですね。
「ねぇ、どうしたの?」
ふと、何かがぴょこんと顔をだしました。
「ねぇ、どうして泣いてるの?」
見るとススムのヒザくらいの背たけの葉っぱの色をした子がいました。
ぴょこりと不思議そうにススムの顔をのぞきこんでいます。
「あっ、わかった。まいごになっちゃったんだね」
その子は、ぴょんとススムのヒザの上に乗ると、泣いているススムの頭をやさしくなでてくれます。
「あのね、ぼくも、よく、まいごになるんだよ。でも、いつもおじーちゃんが見つけてくれるよ。だから、だいじょーぶだよ。ね、泣かないで」
葉っぱ色の子は、いっしょうけんめいにススムをなぐさめようとしているのです。
いつのまにかススムは泣くのを忘れて、目の前にいる葉っぱ色の小さな子を見つめていました。その子の姿が今まで見たことがなくて、とっても不思議だったんです。
「そうだ、おじーちゃんにお願いしてみるといいよ。おじーちゃんはね、この森のことならなんでも知ってるよ」
「ホント?」
「うんっ」葉っぱの子はニッコリしました。「まっててね。いまよぶからね」
葉っぱの子はス〜っと息を吸い込んで、さっきススムがしたみたいに大きな声で呼びました。「おじーちゃ〜ん」
するとススムが座っていた大きな木の後ろから声がしました。
「なんじゃ〜い」
のんびりとした声が、木のかげから顔を出しました。
「おお、ここにいたんか。どえりゃー探したぞぉ」
もさもさと歩いてきたのは、葉っぱ色の小さな子よりは大きいけれど、ススムよりは小さい、やっぱり葉っぱの色をしていました。
「うひゃぁっ」葉っぱのおじーさんはススムに気づいたとたん驚いて後ろに転びました。
「おじーちゃん、だいじょうぶ?」
葉っぱの子が急いで駆け寄って、おじーさんが起きるのを手伝いました。
「おお、おお、びっくりしたなぁも」
おじーさんは、痛そうに背中をさすっています。なんだか、その仕草やしゃべりかたは、ススムのおばあちゃんと似てるなぁ、と気づきました。きっと、この葉っぱのおじーさんは、ススムよりも、たくさんたくさん年をとっているのでしょう。
葉っぱのおじーさんは、もさもさとススムのそばに歩いてくると言いました。
「おまえさんは人間の子供じゃないかのぉ」
ススムはコクリと、うなずきました。
「あのね、おじーちゃん。この子まいごなんだって」
おじーさんは、横にいる葉っぱの子に話を聞くと、「ほほぉ」と目を細めました。
それから、ふむふむと、葉っぱの腕を組んで考え考え、ひょこひょことススムのまわりを歩きながら「おみゃーさんは、いったい、どこから来たのかのう?」とススムに色々とたずねます。「いったい」が「いったゃぁー」と聞こえました。
「ぼく…わかんないよ」
ススムには何も答えることができませんでした。なんだか、また悲しくなってきました。
「あっあっ、泣かないで〜」
葉っぱの子が急いでススムのそばに寄ってきてくれました。
「ねぇ、おじーちゃんなら、この子のおとーさんのところがわかるよね。ねー?」
葉っぱの子が小さな目をパチクリしながら、おじーさんにお願いします。
「そうじゃのぉ。ワシには、なんもわっからせんが…」
葉っぱのおじーさんは、のんびりと言いました。
「どれ、みんなに聞いてみるとするかの。ちと待っとれや」
おじーさんは「よーいしょっと」と、大きな木の上に飛びあがりました。葉っぱが風に乗るように軽やかでした。
おじーさんは両手を上げて呼びかけました。
「おおい、教えてくれんかのぉ〜」
すると、小鳥が飛んできて言いました。
「やあ、じーさん。それなら、あっちの森の入り口で子供をさがしている人間がいたよ」
「ススム〜って、呼んでたよ」隣の木の上からリスが言いました。
「あ、それ、ぼくのなまえだよ」ススムは立ち上がって言いました。「きっと、ぼくのおとーさんだっ」
よかった。おとーさんが、ぼくのことをさがしてくれてるんだ。それなら早く帰らなくちゃ。
「みな、ありがとな〜」
おじーさんは小鳥とリスに手を振って見送ると、ぱさりとススムの肩に降りてきました。おじーさんは葉っぱのように軽いです。
「さあて、場所がわかれば、だいじょうぶじゃ」
「ね、ぼくの言ったとおりでしょ。よかったねー」
葉っぱの子もススムの肩に乗ってニコニコしました。
「うん。ありがとう」
ススムもニッコリしました。もう悲しくなんてありません。
「さあ、目をとじてごらん」
ススムはおじーさんに言われたとおり目をとじました。
「よし、いくぞい」
「じゃあ、またね」葉っぱの子のカワイイ声が聞こえました。
「ぱいぽぱいぽの じゅげむの ちょーすけ…」
おじーさんの、のんびりした声がヘンテコリンな言葉を言うのが遠ざかって聞こえました。
「そしたらな、目を開けると、葉っぱのおじーさんも葉っぱの小さな子もいないんだ。どうやら、ぼくは木の下で寝ていたらしいんだ。きっとお父さんは夢を見ていたんだろうな〜」
そう夢だったに違いない。
あの葉っぱ色の不思議な姿をした子を見た理由を、そう考えて納得していました。
「ううん、それ夢じゃないよ」息子のサトルくんが言いました。「だって、ぼく、その子の名まえ知ってるもん」
「へ?」
驚いているお父さんに、サトルくんはトクイげに言いました。
「キッコロっていうんだ。それで、もりのおじーさんはモリゾーだよ」
「もりぞう? なんだい、そりゃ」
焼酎の名前でそんなのなかったか? いやいや幼稚園児が知ってるわけないし。
サトルが好きなアニメのキャラクターの名まえか何かかな?
「なあ、サトル…」お父さんは、息子に『もりぞう』とは何か聞こうと思いましたが、見るとサトルくんは、すーすーとかわいい寝息をたてています。
「ありゃ寝ちまったか」
息子の寝顔を見ながら、この子の夢の中に葉っぱの子が夢にでてくるといいなと思いました。
「あら、早かったわね」
お母さんが子供部屋からリビングに戻ったお父さんに声をかけました。
「まあな」
これでも昔は小説家を夢見てた文学青年だったんだ。と言おうとしましたが、先に気になっていたことが口から出ました。
「…なあ、『もりぞう』って何だい?」
「知らないの?」
お母さんは新聞を載っている緑色のキャラクターを指差して言いました。
「これのことよ。今度の万博のキャラクターの名前じゃない」
「あっ、こいつのことか!」
そういえば、見たことがあります。お父さんが会社に行くときに毎日乗っている地下鉄の車体に、愛知万博のPRステッカーが貼ってあるんです。
「ああ、そういえばこんなキャラクターいたな。いや、名前までは知らなかったよ」
お父さんは、まじまじとモリゾーを見ました。横にいる黄緑色のキャラクターはキッコロというのだと、お母さんは教えました。
どうして気づかなかったんだろう。モリゾーとキッコロは、まるで…。
「いや、まさかな〜」
お父さんは新聞から目を離して、はははと笑いました。
次の日。お父さんは本屋さんに寄って葉っぱ色をした絵本を買って帰りました。
今夜は、サトルくんに、この絵本を読んであげるつもりです。
絵本の題名は「もりのこえ」といいました。
読んでくださって、ありがとうございました
なんとなく、本当にモリゾーとキッコロに会えたらいいな〜と思って書いてみました。
アニメにはヒトは出てこないですものね。
ちなみに、サトルくんの名まえは漢字で「知」と書きます。姉は「愛(めぐみ)」といいます。姉弟合わせて「愛知」です(笑)
/// 05/01/15
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